東京都労働相談情報センター

労働条件の変更に関する相談事例


1.賃金の変更

相談内容
1年契約で営業の仕事に従事している外国人。契約期間満了を機に帰国する準備を進めていたところ、会社から契約を更新すれば賃金を上げると言われたので、もう1年働くことを決意し、帰国手続きをキャンセルして契約更新した。ところが、1ヶ月後給与明細を見ると、賃金は更新前と同額であった。
経過・対応
センターが会社から事情を聞いたところ、「賃金アップは今後、営業成績が上がればという意味であり、契約更新とは別の話。帰国のことも初耳で、会社には関係ない。いやなら辞めてもらってもいい」との話。また、相談者と会社は契約書などの書類を取り交わしておらず、口約束のようであった。
そこでセンターからは、「労働基準法上、使用者には書面による労働条件明示の義務がある。それを怠り、賃金アップを誘い文句に契約更新の口約束をしたなら、契約成立とも考えられる。もう一度、相談者と話し合ってはどうか」とアドバイスした。
その後、会社との交渉の結果、相談者は退職の意思を固めたので、話し合いは退職条件に移行。センター立会いの下お互いが譲歩し、(1)契約更新後1ヶ月の賃金は、賃金アップしたものとして計算し、会社はその結果生じる不足分を支払う、(2)退職は合意退職とし、帰国手続きキャンセル代金相当を慰労金として支払う、ということで解決した。

2.年俸制で賃金の変更

相談内容
相談者は年俸制の1年契約により、コンサルタントとして採用された。しかし、支給されるべきボーナスが支給されない。さらに契約途中の業績評価として、良い評価がなされたにもかかわらず、後期分に支払われるべき年俸が月割りで2割減額された。年俸制で契約したのに、中途で減額するのは不当ではないか。
経過・対応
センターが会社側に事情を聞いたところ、「確かに契約は1年間であるが、年俸は半年に1回評価を見直し、額もその評価を反映させるように弁護士と相談して決めた。また、相談者の仕事に対する評価は十分であると評価しているが、相談者の役職と職務に対する支給額が高すぎたとの判断で、減額等措置を施した。当社は設立間もない状況で、有能な社員を早急に確保するために職務以上の年俸で契約をし、後で職務に見合う年俸に切り替えればよいとの認識で考えていた」とのこと。
センターは(1)契約時に両者の合意がない以上、業績評価の結果は、次回の契約以降の年俸で反映させるべきで、1年間の契約期間は契約に基づいた年俸の支払いをするべきではないか、(2)契約時の年俸に相応した職務等を提供できないといった、いわば会社側の一方的な都合で相談者の年俸を減額するのは、不利益変更になる上、当初の契約に対する不履行になるのではないか、(3)今後は会社として十分な説明責任を果たした上で、契約内容の変更に関しては労使間の十分な話し合いと合意を図るべきであること、を助言した。
その後労使で話し合った結果、相談者が次回の契約更新を希望しない意向であることを踏まえ、(1)契約期間中は当初契約した年俸額で支給し、カット分は早急に支払う、(2)相談者は契約期間満了をもって合意退職とし、ボーナス相当額プラス賃金3ヶ月分の慰労金を支払うこと、で解決した。

3.労働時間の変更

相談内容
1年更新の契約社員として5年間勤務。契約期間の途中で、業務量が少ないことを理由に、経営者から短時間勤務とするか退職するか迫られている。
経過・対応
労使の意向を踏まえ、調整した結果、(1)雇用期間の残期間を考慮した一定の保証金を支給、(2)雇用保険の遡及加入手続きを行う、の2点を条件に退職することで解決した。

4.配置転換

相談内容
家庭電化製品の部品製作会社で部品設計業務に従事していた外国人。受注減少に伴い、秘書室に配転となり、主に雑用などの業務ばかり命じられた。さらに机を勝手に処分されたりといった嫌がらせを受けた上、「退職届」を提出するよう求められた。自分としては退職の意思はない。その旨を伝えると、(1)職種変換を伴う勤務継続、(2)功労金受け取りによる自己都合退職、さらにそれに従わない場合は(3)懲戒解雇とする、との回答文書が送付された。
経過・対応
会社側の主張は「東京本社で受注が激減し、相談者が在籍していた部門は廃止となった。クビにはしたくなかったので秘書室付けで勤務してもらっていたが、業務に不満なようだったので退職を考えてもらうことにした」とのこと。
相談者は雇用継続を希望していたので、相談者に対しては、就労ビザの範囲内で勤務地の変更などに応じてはどうか、と助言した。会社に対しては、(1)常識を逸した退職勧奨は社会モラルに照らしていかがなものか、(2)他の地域でも相談者が従事できるような設計の仕事があるようならばそこでの勤務を検討してもらえないか、などを打診した。
その結果、会社側から他県の工場ならば設計の仕事を継続しているのでどうだろうか、との提案があった。相談者は家族と相談の上転勤を了承、本来の部品設計の仕事を続けられることとなった。