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非正規労働者雇用環境整備支援事業

企業名

写真:社会福祉法人正吉福祉会

社会福祉法人正吉福祉会

所在地 : 稲城市平尾1127-1
業 種 : 特別養護老人ホーム等
基本金 : 8億3,999万円
従業員数 : 674名 (うちパート338名)
企業URL : http://www.shoukichi.org/
                         (2007年1月現在)

 

取組内容

職務・能力に応じた人事・賃金制度

人事考課制度を整備し、パート社員を1~3の3段階に分け、職種別に作成した考課表に基づいて能力と実績の両方から評価を実施し、評価結果を昇格や昇給などの処遇に反映しています。

正社員への転換制度

正社員への転換の希望を聴取する機会を設け、毎年多くの実績が出ています。

教育訓練制度の整備

全社員が参加できる研修を計画的に実施しており、責任者を設置するなど、積極的に職員教育に取り組んでいます。

明確な基準の人事考課制度を導入し、適正な評価に基づく適正な処遇の推進が図られ、公平性が高まりました。

(2007年3月27日モデル企業指定)

 

トップインタビュー

写真:社会福祉法人正吉福祉会部長

職員のモチベーションアップを実現する独自の
人事考課制度と達成感の得られる職場づくり

社会福祉法人正吉福祉会
統括経営部長  向井 俊右 さん

 

 

 

 

 

使命感に応えることが離職率の低下にもつながる

「人の世の正しき道を踏み行かば福徳至り吉事ありなん」――。

「正吉福祉会」は、理事長の母堂が和歌に詠い込んだ一節から名づけられた社会福祉法人。1985年稲城市に設立以来、都内を中心に特別養護老人ホームなどを展開している。98年には東京都より高齢者サービスステーション第1号として認定され、さらに2001年には天皇皇后両陛下の行幸啓の栄誉に浴すなど、20年以上にわたり地域福祉の一翼を担っている。

また一方で、この正吉福祉会は介護業界が抱える人手不足、高い離職率といった問題の解決に積極的に取り組んでいる社会福祉法人としても著名だ。

同法人の向井俊右統括経営部長は言う。

「もともと介護職員のほとんどは、『人の役に立ちたい』『お年寄りの生活を改善したい』という使命感からこの職を志望しています。その使命感を貫き通してもらうためにも、できるかぎり職員が納得のいく仕事ができる職場をつくっていかなければなりません。職員一人ひとりが意欲をもって働ける環境を整備することこそが、離職率の引き下げる一番の近道であり、同時にそれは入居している高齢者の方々の満足にもつながるのです」

現在、正吉福祉会は東京都と神奈川県で、特別養護老人ホームをはじめとする高齢者福祉施設、そして訪問看護ステーションなどを複数展開。職員は、およそ340人の非常勤職員(パート・契約社員)と290人の常勤職員(正職員)で構成されている。この職員割合からも、正職員のみならず非正規雇用職員の雇用環境の改善がいかに重要な課題か、理解することできるだろう。

 

独自の考課表(レビューシート)で非常勤職員も公正に評価

向井部長の発言にもあるとおり、正吉福祉会における雇用環境整備の最大のテーマは、「意欲をもって働ける職場づくり」「高いモチベーションで働ける職場づくり」である。中核施設である「いなぎ正吉苑」をはじめ、同法人で導入している独自の人事考課制度は、まさにそれを実現するための施策のひとつだ。

この人事考課制度ではまず、非常勤職員をトレーニー、パートナーⅠ、II、IIIなどの等級に分ける。そして各職員を「施設介護」「栄養・調理」「施設看護」など職種別の考課表(レビューシート)によって評価していく。評価項目は、「法人理念の理解度」や「衛生面の管理」といった"基本項目"と、「清掃」や「食事介助」、「入浴介助」といった"スキル評価"に大きく二分されており、偏りなく業務全体を多面的に評価できるように工夫されている。

そしてもちろん、ここでの評価は処遇や報酬ときちんと連動している。各等級で定められた基準を満たした職員は、トレーニーからパートナーⅠ、パートナーⅠからパートナーIIへと昇格。それに応じて給与もアップしていく。

「パートナーIIIの上には、非常勤職員の中の管理職という位置づけで、パートナーリーダーという等級も設けています。能力や仕事ぶりを公平な基準で評価すること、職員に明確な目標を提示することは雇用環境整備の基本。例えば新人とベテランで、明らかにスキルが違うのに同じ評価になってしまっては、やはりモチベーションの低下を招いてしまうでしょう」

また考課表には、非常勤職員に対して、「常勤職員への転換を希望するか」を確認するための項目も設けられており、上長が職員の希望をきちんと把握できるようにしている。

個人や家庭の事情の変化に伴い、非常勤か常勤か、マッチした働き方は当然変化する。日々忙しく働いている職員にとっては、自分の働き方を定期的に落ち着いて考える機会が与えられることは大きなメリットだ。実際、今年度も正吉福祉会全体で16人の非常勤職員が常勤社員への転換を果たしている。

 

制度だけでなく、仕事のやりがいがモチベーションアップの源泉になる

正吉福祉会では、独自の人事考課制度の導入のほかにも、職員のモチベーションを支える真摯な取り組みを実践している。

例えば、非常勤職員の賞与、退職金制度がそうだ。これについては、パートタイム労働法が改正されるはるか以前から就業規則に明記してきた。

非常勤職員の賞与は勤続年数を変数にして支給。勤続年数の長い人は、常勤職員にかなり近い数字となる。退職金制度は、法人発足当時から非常勤職員に対しても適用され、現在は週30時間以上勤務の職員が東京都社会福祉協議会の退職金制度の加入対象となっている。

また教育研修についても、常勤職員・非常勤職員の区別はない。

「介護の基本はなにより"接遇"、いわゆるおもてなしの気持ちです。なので、接遇に対する基本的な考え方、身だしなみ、言葉使い、コンプライアンスなどについては懇切丁寧に指導を行い、さらには口腔ケアなどの医学的知識を得る研修も実施しています。現場の職員の多くは、入居する高齢者のQOL(生活の質)が改善したのを目にしたとき、"達成感"を感じるといいます。その意味でも、教育研修は職員の意欲向上において、重要な役割を担っているのです」

雇用環境の整備において、評価や報酬に関する制度や規則はもちろん欠かせない。それが"公正さ"や"公平さ"の基準になるからだ。

ただ一方で、一人ひとりの"人間"が働く職場では、「日々の"達成感"」という視点も忘れてはならない。どんなに制度が整っていても、仕事自体にやりがいを感じられなければ、そもそもモチベーションは生まれないのだ。

 

チームワークを生かし現場の課題を共有

日々の業務の中で、職員が達成感を得られる環境の整備──。

正吉福祉会ではこの実現のための一施策として、特別養護老人ホームにおいては、常勤・非常勤職員混合のおおよそ10人チームによる介護を実践している。各チームは、決まった入居者グループの介護にあたるため、入居者と介護者のコミュニケーションは自然と深まる。入居者から、日常的に感謝の言葉をもらう機会も必然的に増えることになる。そうしたひとつひとつの積み重ねが、自分の仕事の意義を実感し、やりがいを感じることにつながるのだ。

「また、介護を進めるなかで何か課題が持ち上がっても、チームワークでそれを解決できるというのがもう一つの大きなメリットです。チーム全体で課題を共有することで、一人で悩みを抱え込むということがほとんどなくなりました」

現在、正吉福祉会の施設への入居を希望し、待機している人は、数百人近くに上るという。

「人の世の正しき道を踏み行かば福徳至り吉事ありなん」──。

この"吉"は、社会福祉法人としての正吉福祉会だけのものではない。そこで働く一人ひとりの職員、そして入居する高齢者の方々、すべての人にもたらされるものに違いない。

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