非正規労働者雇用環境整備支援事業
企業名
大同情報技術株式会社
所在地 : 杉並区和田3-54-5
業 種 : 測量業
資本金 : 3,000万円
従業員数 : 21名
(社員への転換などで現在アルバイトは0人)
企業URL : http://www.daido-it.co.jp
(2008年5月現在)
取組内容
職務・能力に応じた人事・賃金制度
パート社員を含む全従業員の社内等級を5段階(うちパートは3段階)に区分し、等級ごとに必要な基準を明確にしたうえで、人事考課の評価結果により社内等級を決定し、権限・責任・給与等に反映しており、パート社員の意欲・能力に応じた処遇を行っています。
全社員一律の明確な評価基準
人事考課は、年1回、パート社員・正社員の別なく、全従業員に対し、一律の明確な人事考課基準による評価を行っており、自己評価表による自己評価の後、社長が面談及び評価を行い、最後にフィードバック面談を実施するなど、適正な評価に努めています。
正社員への転換制度
評価結果とリンクした正社員への転換制度を整備し、かつ実績も出ており、パート社員から正社員まで一貫した人事・賃金制度になっています。
このような取組を行うことによって、社内での意思疎通が改善される、長期勤続の意識が高まるなど、取組の効果が出ています。
(2007年2月7日モデル企業指定)
トップインタビュー
懸命に仕事する人に応える仕組みで
社内の一体感を強化
大同情報技術株式会社
代表取締役 尼野 邦貞 さん
同じ土俵に立っての評価ですべての頑張る人に報いる
道路の整備や宅地の造成といった都市計画に不可欠な測量技術。そして測量で得られた数値を電子化し、処理のしやすいデータとして提供する計測の技術。この二つの技術を柱に、国土交通省、東京都、神奈川県といった地方公共団体などへ地理情報を提供し、測量業界でいち早く行政のIT化に対応してきたのが大同情報技術株式会社だ。
皇居・赤坂御用地の地形図作成も担当するなど、業界内でも高い評価を得る同社は、2006年6月、抜本的な人事制度改革を実施。アルバイトも含むすべての従業員を対象に全社共通の人事考課基準を導入し、給与をはじめとする処遇に反映した。また、アルバイトから正社員への転換制度なども明文化し、休暇制度、安全衛生教育制度なども整備。東京都から「非正規労働者 雇用環境整備 支援事業」のモデル企業第1号として認定を受けた。
「懸命に仕事をするスタッフに応えていける、"公平な評価"とは何なのか。この問いへの答えをここ10年ずっと考えてきました」と尼野邦貞代表取締役。
「公共事業の入札価格低下などの影響で、当社でも効率化に力を入れてきました。また、少数精鋭を方針としていることもあり、社員一人ひとりの力に頼る部分はどうしても大きくなります。さらに、データ入力や測量の補助の場面で、アルバイトはなくてはならない存在。3~4年など長期にわたって勤務し、スキルも意欲も高いアルバイトに『どうしてアルバイトというだけで正社員より給料が安いんだ』という思いをさせてはいけないと思ったんです」
しかし当時のアルバイトの就労規定はごく簡単なもので、それを基準に給与等の処遇面を急に変えるのは難しかった。そこでアルバイトと社員をあえて分けず、同じ土俵で評価するよう決定したという。
明確な基準のもと、労使とも納得のうえで給与を決定
「社で働くすべての人に公正な基準で報いたい」
そんな思いに基づく新制度の要は、公開の考課基準に基づいて行われる年に一度の人事考課だ。毎年五月になると役員からアルバイトまで、全社員に共通の考課シートが配布される。シートには「積極性」「信用性」などの項目について、「能力の向上に努めたか」「相手側と約束した日時はすべて守ったか」など100ほどの質問が記載され、自己評価を書き込んでいく。内容は責任性や勤務態度など仕事の基本を見るもの、仕事におけるスピード、注意力を見る技術的なもの、経営的な視点を見るものなど多彩。
自己評価が終わると複数の役員との面談等を経て評価が確定し、各問への評価ごとにポイントが加えられる。また、測量士、土地家屋調査士など業務に直結する資格があればさらにポイントを加算。合計が給与算出の基本となる。
実はこの考課シート、取締役の意見なども取り入れつつ、尼野社長自らが作り上げたものだ。
「人事評価をするにも、客観的な指標がないと感情的なものになってしまいがち。ですから、何がどのように評価されるか、誰の目にも白黒がはっきり分かるようにすることに一番気をつけました。例えば考課シートのある質問で『ほぼ完璧』と評価されれば一ポイントで時給が30円上がるという方法。社員には真剣に『給料を上げるのなんて簡単だぞ。ここに書いてあることを意識し、実行すれば、いくらでも給料は上がるんだから』と言っています」
平等な人事考課というメッセージが全社の一体感を高めた
会社が求める人材の要件を明示することで公平性の高い人事評価が可能になる一方、考課の際にアルバイトの意見を直接聞くことで、社内での意思疎通もよりスムーズになるというメリットもあった。
また、驚くべきことだが、この考課時にはアルバイトも含む社員全員が、次の一年ではどのような形で仕事をしていきたいかについて、「役員」「一般職」「専門職」「アルバイト」などのなかから一つを選んで自ら申請する。希望が認められればアルバイトから社員への転換が可能で、最初の年は6名のアルバイトが正社員に転換。アルバイトとして入社し、この制度を活用して社員となり、現在は役員として活躍するスタッフもいる。
もちろん、考課で前年より評価額が下がってしまうケースがないわけではない。この場合、その年は調整期間として前年に近い額を払うが、「それはあくまで考課外で、来年はこうはいかない」とはっきり伝えるなど、評価を受ける側に厳しい面もある。しかし、明確な基準によって処遇が決まるという制度のもと、安心して勤務することが可能となり、長期勤続の意識が高まった。
「当社は技術を元にビジネスをする会社ですから、"プロとしてお金を稼ごう"と常に言っていますし、効率を上げ、残業を減らし、給与を上げようということは、具体的な数字とともに社の長期目標として共有している。そんな状況のなかで、『頑張って生産性を上げた人にはしっかり報いる一方、やる気がなくて足を引っ張る人は、きちんとしてもらうか去ってもらう』ということを組織のメッセージとしてはっきり打ち出せたのはよかったと思います」
やる気がある人とない人が同じ場所にいて手を打たずにいると、どうしても易きに流れやすくなるのは人間の性。しかしこうしたメッセージを打ち出すことで、社員のモチベーションも高まり、効率性についても社員同士で話し合うなど、新たな一体感が生まれたという。
「経営理念や経営目標がありますが、最終的には『給料もいいし、やりがいもある。そして社会にも貢献できる。この会社に入ってよかったな』と社員が思える会社にしたいですね」
従業員の声
年に一度の自己評価が
仕事ぶりを振り返るいい機会に
M.O.C.計測担当
安村 重太郎さん
社員、アルバイト共通の全社統一考課が導入されたのは、入社5年目になる2006年の6月。同時に自分が社員として働くか、アルバイトとして働くかを選択するようになったんです。
『社員になるからにはすべての仕事を一人で完全にやらなくては』という不安も感じましたが、結局、社員として働くことを選択。実際は上司が親切に教えてくれ、取り越し苦労だったと分かりました。
考課で自分を評価することには戸惑いもありましたが、これが自分の1年間の仕事ぶりを振り返るいい機会にもなっています。
社員として働くようになり、以前は仕事の一部分しか見ていなかったのが、全工程をふまえた仕事ができるようにもなりました。頑張った部分を会社が評価してくれるところには強いやりがいがありますね。これからは技術力をより高めるとともに、今までの仕事で学んだことを応用しながら、新しい仕事でも成果を上げたいと思います。
お問い合わせ先東京都産業労働局 雇用就業部 |