セミナー・労働教育
「副業・兼業をめぐる動向と労務管理のポイント〜スポットワーカーを雇用するときの注意点も解説〜」質疑応答
オンラインセミナーの内容について受講者よりいただいたご質問に対して、セミナー講師よりご回答いただきました。(令和7年8月22日まで掲載)
回答者(講師)
弁護士 宇賀神 崇 氏
【質問1】
法令を遵守し、本業先で週40時間以上働く労働者を雇い、すべての勤務時間について割増賃金を支払う副業先はどのくらいあるのでしょうか。副業先は実際に割増賃金を支払っているのでしょうか。支払っていなくても、労働者からの訴えがなければ、特に問題とならないでしょうか。
割増賃金を支払わないからといっても労働者が訴えでもしない限り把握することはできないように思いましたので、厳密に法令を遵守している企業がどのくらいあるのか気になりました。副業先からすれば、同一労働なのに常に割増賃金となるような人を雇うメリットがあるのでしょうか。
副業をする労働者の側からすると、本業の収入では生活資金が不足するためにやむをえず副業をする人が多いのではないかと思いましたが、常に割増賃金になることによって副業先が見つからず、逆に労働者の不利益になってしまうのではないかと思いました。実際には割増賃金にはせずに働いている人も多いのではと思いました。しかし、長時間労働の防止の観点では、本業・副業を通算した労働時間の管理は行われるべきであると思います。労働者にとってどのような制度、運用が望ましいのか、考えさせられました。
【回答1】
副業先として、雇用している従業員が別に本業がある事実自体を知らないケースもあり得るとは思いますので、全ての副業先が全ての勤務時間に割増賃金を支払っているわけではないと思います。他方で、副業先が、雇用している従業員に別に本業があることを知っている場合、当該従業員に本業先の労働時間を申告させるなどして割増賃金を支給する企業が世の中に存在しないということではないと思います。
いずれにしても、副業先からすれば、本業がある従業員には最初の1分から割増賃金を払わなければならないので、そもそもそのような従業員を雇うメリットがないのではないか、というご指摘も、従業員に本業先の労働時間を申告を求めると逆に副業先が見つからずに不利益になるのではないか、というご指摘も、全くその通りだと思います。これは、わかっている識者はわかって議論しておりまして、このようなご指摘も踏まえて、労働時間の通算の規制の見直しが議論されているわけです。現状の議論では、割増賃金の規制は無くする代わり、長時間労働を防止する観点からの規制を何らか残す方向が議論されています。
【質問2】
労働時間の通算について、労働契約の締結の先後の順で通算とありましたが、有期雇用者の雇用契約満了後の更新はこれに影響されるのでしょうか?
例)Aさん
本業 契約期間2024年6月~2025年5月
副業 契約期間2025年1月~2025年12月
本業の雇用契約が2025年5月で満了後切れ目なく更新した場合、Aさんはどちらの雇用契約が先と考えられるのか?
【回答2】
あまり議論されているわけではない論点であると思いますが、本業が雇用契約を更新しても、当初の雇用契約の締結時期で本業かどうかを考えるべきだと思います。ご指摘いただいた例では、本業の雇用契約が更新され、更新後の契約は副業の雇用契約よりも後に契約したことになったとしても、もともとも本業の契約が2024年6月に始まっている以上、本業は本業であり続けると思います。契約更新によって本業と副業が入れ替わるようなことになるととても実務対応できませんので。
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