セミナー・労働教育
「安全配慮義務と企業のリスク対策 ~労働事故・熱中症・過労死等の防止対策~ 」質疑応答
オンラインセミナーの内容について受講者よりいただいたご質問に対して、セミナー講師よりご回答いただきました。(令和7年8月14日まで掲載)
回答者(講師)
弁護士 宮島 朝子 氏
【質問1】
安全配慮義務は信義則上の義務とされているので労働契約の有無に関わらず、広く私法全般に係る義務と認識しています。只、安全配慮義務違反として「損害賠償請求」を行う場合の根拠は債務不履行(労働契約に限らないが)か、不法行為(権利侵害)なのではと考えていました。如何でしょうか。
【回答1】
安全配慮義務は、契約関係一般における信義則上生じる付随義務と解されており、その観点からは、債務不履行(労働契約に限られません)構成によることになります。
もっとも、裁判例では、契約上の債務としての安全配慮義務と不法行為制度の注意義務を区別することなく認める傾向がありますので、実態としては不法行為構成と大きな相違はないということになります。
【質問2】
パワーハラスメントとも取れる若しくはその一歩手前の不適切行動(大声を出したり、高圧的、威圧的言動を繰り返す。周囲の社員を委縮させてしまう態度を取る)をしてしまう社員に対して、自身の業務上の対応が改善を要するものであることを自覚させ、行動変容させるにはどうしたらよいでしょうか?
一般的なハラスメント研修ではなかなか本人まで届きません。個別に本人へ言って聞かせるとしても、その注意指導を受け入れず響かない場合の対応や個別研修について講義があればぜひお聞きしたいです。
【回答2】
使用者としては、そのような社員について、①不適切な言動を改善するよう指導を行うという観点と、②他の社員の就業環境を守るため、不適切な言動を行う社員に注意を行うという観点の両面から対応を行う必要があります。
①の観点からは、ご指摘のような個別研修の実施が考えられ、導入を行う企業も見られるところですが、会社として社員の言動を改善するために個別研修の実施まで行う義務があるわけではなく(個別研修の実施まで行うことができるのであれば、もちろんそれが望ましくはありますが)、個別研修を行ったとしても改善が見られないケースも当然あることから、①と並行して②の観点からの対応も行う必要があるものと存じます。この場合、メールや文書等記録に残る形で注意指導を行い、本人との面談を行う等して改善を促し、それでもなお改善が見られない場合には、段階を挙げて処分等の対応を行っていかざるを得ないかと存じます。
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