Tokyo Metropolitan Vocational Skills Development Center

東京都 東京都立城東職業能力開発センター

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

 石川金網株式会社

代表者:代表取締役社長 石川幸男     所在地:荒川区荒川5-2-6
主な事業内容:金網製品製造・販売
URL   :http://ishikawa-kanaami.com/

受賞等:2012年 しんきん協議会連合会・東京事業経営者主催「平成25年度 優良企業表彰 
         特別奨励賞」を受賞
    2013年 平成26年度 中小企業庁「がんばる中小企業、小規模事業者300社」に認定
    2014年 東京ビジネスデザインアワードにおいて「テーマ賞、優秀賞」を受賞
    2015年 第10回 TASKものづくり大賞にて、大賞を受賞
    2016年 世界コンペティションで東京都ベンチャー技術奨励賞を受賞
    2017年 東京労働局 足立・荒川安全衛生推進大会にて優良賞を受賞
    2018年 第18回 ホビー産業大賞 経済産業大臣賞を受賞

図2 図3

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

テーマ1 社員の『働きがい』向上について

100年目を元気に迎えるために

 石川金網株式会社 専務取締役 石川カオリ

 石川金網㈱は5年後に100周年を迎えます。100周年を迎えるに当たりましては、しっかりと足場を固め、足腰の強い企業体質にしていこうとの思いがあります。
 95年の間には、幾たびかの危機を、ピンチをチャンスに変えて乗り越え、転機として参りましたが、先のリーマンショックでは、崖から突き落とされるかのごとくの業績悪化となり、本当に業務改善を余儀なくされました。この10年で行った業務改善ですが、何十年も整備されずにいたと思われる、経理・総務関係書類の様式整備、就業規則の作り直し、給与体系の見直し、人的配置・業務と書類の流れ再構築を行って、会社全体を隈なく把握できるようにしました。また、組織をピラミッド型にして管理職の再機能化を行いました。
 このように改善に取り組みながら、「商売においては、汚いことずるいことはしない、正しい商売をする」というシンプルな理念を守ってきたことが、今日の信頼につながっていると思っております。同様に、社員とは、徹底的に向き合って話し合い、気軽に声をかけ、共に問題を解決する姿勢を貫き、信頼関係を築いて参りました。

~パート社員さんに定着・活躍してもらうために~

人材関係で実績を上げたことに、パート社員さんの活用ということがあります。リーマンショック後の不況にあって、かねて重荷であった部門のリストラを断行したところ、残っていただいた人たちもどんどんやめてしまうという事態が起こりました。
そこでまず取り組んだのは、主婦層や高齢者層に活躍してもらうため、個人の事情にあった働き方を「歓迎」するということです。コアタイム(10時から16時)をベースに、面接でよく話し合って働く時間や曜日を決める、事情が変わればその都度よく状況を聞いて合わせてあげる、ということを積極的にやってきたところ、意外と、職場の皆で許しあい支えあう雰囲気ができてきて、定着してくれている状況になりました。
 また、採用は3か月契約として、その間に一つの職種をやってもらい、合わないようであれば次の3か月で別な職種をやってもらう、そうやって更新を積み重ね、適材適所を見極めていく。たいがいご本人もこの仕事が合う合わないを感じていらっしゃるので、話し合って同意して、引き続き頑張ってもらえたと感じています。とにかく一度きてくださった方を離さないために、とことん全部の仕事を試していただいて定着していただく、という方式を編み出しました。そうして2年間定着してくださったパート社員さんは、上司の評価と本人の希望があればフルタイムの契約社員とする。更に2年間頑張ってもらえたら正社員とする、というステップアップの制度を作っております。

~会社は貴方を評価している~

 そんな中、パート社員さんにもボーナスを支給しておりまして、これは一番喜んでもらえているかなと思います。ボーナス分で扶養の範囲を超えてしまう場合には有給休暇で調整してあげます。会社は貴方を評価しているんだよという気持ちをアピールし、感じ取ってもらうためにも、そうやってボーナスは必ず出しております。
 目標管理など評価・人材育成システムは今後の課題ですが、以前コンサルタントを入れて評価システム導入を試みたものの、当時の自社の実情に合わず、形骸化して中断したという経験がありました。しかし社長から改めて「目標管理をやりたい。みんなに挑戦してもらう年にしてもらいたい」との話がありましたので、皆で話し合いまして、どんな簡単なことでもいいから自分たちが挑戦と思うことを課のテーマに決めて、1年間追いかけ、年末に「これ、やったね」と言える実績を持つ、まずそこから始めようということになりました。本当に身の丈にあった、途中で放棄したりせず最後までやっていける目標について、それぞれが役割を担いながらやっていくというところから始めようとしているところです。
 また、最近になって、社員の中から「勉強をしたい!」という声が出始めているという嬉しい動きがあります。このような自発的な声を丁寧に拾い、納得のゆくまで話し合い、自社に合ったシステムを今後つくれればなと思っているところです。

~新事業へと踏み出すとき~

 オリジナル商品の「おりあみ」(※)ですが、石川金網㈱はずっとbtobの製品を扱って参りましたので、初の一般の方向け商品となる「おりあみ」につきましては全て手探りでした。この「おりあみ」の開発・販売を通じて感じたことですが、新しいビジョンを持って経験のない分野に踏み出すことができる人というのは、あまり逡巡するようなタイプですと踏み出す力が弱まってしまうのかなとは思います。しかし、限られた資金や人材を細かく見て修正しながら進めることのできる有能な事務方がいて初めて新しい事業が成り立っていくのだということも実感しました。ですので、皆様が新しい事業に取り組まれるにあたり、アドバイスさせていただくとすれば、イエスマンだけを置くのではなく、本当にしっかりとした片腕というものを置かれて頑張って新しいことをなさっていかれるといいなと思います。
(※)「おりあみ/ORIAMIR」は、世界で初、紙と同様に折れる「金網製の折り紙」です。熟練職人の遊び心から誕生しました。

...ワーキンググループに参加して...

ワーキンググループでは、他社の取り組みや考え方、思いをじっくり聞く機会となりました。人材育成支援について公的機関に対する要望としましては、社内で育成できなかった経営的視点を持った人材(例えばOB人材等)の紹介など、自社でかなわなかった部分への補完機能を期待しています。

※この文章は、会合での発言を事務局で取りまとめたものです。

バキュームモールド工業株式会社

代表者:代表取締役社長 渡部雄治   所在地:墨田区墨田5-23-11
主な事業内容 プラスチック製品の真空成形用金型及び抜型の設計、製造
URL http://www.vmold.co.jp
受賞等:はばたく中小企業・小規模事業者300社 選定(経済産業省・中小企業庁、2017年)
    墨田区フレッシュゆめ工場認定(墨田区、2015年・9回目)
    東京都中小企業ものづくり人材育成大賞知事賞奨励賞(東京都、2007年)

図4  図5

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

テーマ2 変革の時代に対応できる組織づくり

ジェントルマンな会社をめざして

バキュームモールド株式会社 取締役 人事・総務部長 枝松 和也

~バキュームモールド工業㈱の組織の変遷~

 技術開発①「外注育成」
創業者は営業から製造まで全部1人で行っていましたが、仕事が増え、人数が増えていく過程で分業していきました。まずは技術開発なのですが、自分たちができないことについては外注の育成を始めました。鋳造や機械加工といったものに外部の力を借り、かつ自分たちの考えを入れた外注を育成していきます。
 
営業設計と製造の分業、製造部門の分業
それでも回らなくなってきたので営業設計と製造を分業し、それでもなお仕事が増えて追いつかなくなってきたということで、製造部門を細かく分業していきました。

技術開発②「外注依存脱却」、工場新設による規模拡大
 
一番伸びた高度成長期には、プラスチック用品の需要がふえて仕事がどんどんふえるに伴い人数もふえていったので、外注を育成する一方、内部でできることは内部でやろうという考えになりました。それで、特殊加工、刃型加工、金型の表面処理といったものを取り込んで製造部門をどんどん大きくしていきました。ついには手狭にもなってきたので埼玉県に工場を新設し、大型の機械などをそちらへ移して更に規模を拡大していきました。

事業部制の採用
 90年代半ばのバブルが崩壊した後あたり、私が入社した頃に、組織を事業部制に変えました。社員規模は160~170名ほどになっていました。弊社の営業部門は営業設計といって、受注の打ち合わせをして自分で設計するのですが、この営業設計と製造とを一体化し、小回りをきかせて進めようというものです。社内に小さい会社を8つほど作るイメージです。また、部署間で疑似的に売り買いを立て、損益を出して経費管理の意識づけも行いました。

工程別組織への移行
 
事業部制は小回りがきく面はありましたが、縦割り的な組織になって横のつながりが弱くなってきてしまい、それもちょっとまずいなという認識から、工程別の組織へと移行していきました。今から10年ほど前のことです。

~現状の問題点~
 
工程別の組織・緩やかな大部屋化することによって互いの繁閑が見えるようになり、作業の平準化等々、縦割り組織の弊害であったところが随分と解消されてきました。しかし今度は横割りの弊害が出てきて、融通がききにくくなってしまった、例えば、別の工程が忙しいときに手伝うといった意識が大分薄れてきているかなというのがあります。
 それから、工程別にしたことによって、その仕事しか知らない人間が増えてきてしまい、それがひいては当社の技術力の低下につながっている面が否めないかなと考えます。また、分業をし過ぎたことによって、特定の作業のボリュームが増大したところにいくら人を投入しても足らなくなってくるという面が出てきてしまい、悩んでいるところです。
 以上のように、製造部門に関してはいろいろと問題があるにせよ手を打ってきたのですが、営業部門に関してはどちらかというとできておりません。一人営業というか、担当営業各自が自分の中だけで処理しようとするため横のつながりができず、組織立った営業活動がなかなかできていないのが現状です。また、事業部制では互いの損益を出すことによって見えていた部分が今の組織では見えにくく、それを各部署の評価にどのようにつなげるかというのも課題です。
 このような状況にあって、また短納期ということもあって、お客様のご要望に日々お応えすることに追われている感があるのかなと感じています。

~組織はいつの時代も変わっていく~
 今回、変革の時代というテーマで考えたのですけれども、多分これは、昔からいつもずっと言われてきていて、この先も言われ続けるのだと思います。しかし組織とは最終的には、お客様が求めている何か、それをきちんと実現する箱でしかないと思います。箱の形態の正解はよくわかりません。ただ、常に変わっていくものだろうなと思い、都度つど変化していくしかないかなと思っています。
 ではどうするかということですが、結局、工夫した箱をつくっても、その仕組みにより動ける社員というものは限られてしまいます。ですので、制約がある自由の中で自分で考えて動ける社員をどう育成していくかがとても大事なところだと思います。お客様のためにつながるのであれば、制約をヒョイっと突破していく社員。ある意味ちょっと面倒くさい社員ではあるけれども、そういう行動ができる人間をどう育んで、組織の中に取り込んで生かしていくかというところを考える必要があるかなと。そして、そういう人間が集まる組織になるとすれば、その箱の頭である管理監督者をどう育成するか、最終的には、会社という大きな箱の経営者がどのようになっているのだろう、どう自分が考えているのだろうというところに行き着きました。
 組織についての話は人材の育成につながり、ひいては経営陣がどう考えて動いているかというところにつながってくるなと思ったところです。ちなみに、弊社の社長はプロパー出身の三代目ですが、創業者とは違い、メッセージを強力に打ち出すというタイプではありませんので、我々としては考えていることこまめに引き出しています。そこからは組織的に伝えていくわけで、まどろっこしく思うこともありますが、そうした中で課長の役割が自覚されスキルが向上していくところもあります。

~ジェントルマンが説明する真空成形~
人材育成に最終的につながるかなと、今、考えていることがあります。当社の技術である真空成形は世の中で知られていない工法なので、それを皆に知ってもらうという取り組みをしたい。その際に「ジェントルマンが説明する真空成形」ということをしたいのです。
 要は、真空成形を知ってもらうときに、何か付加価値を付けたいなと。そのとき、どういう人が説明しているのかというのが大事かと考えました。それは身なり姿勢、話し方。そういうところに気をつけて紹介することで、何か変わったことをしているなと認識してもらえる。それを観た子供や学生さんは、何だか面白そうだなと思ってもらえるかもしれない。また、他の会社さんやいろいろ考えている方とか、そういう人々が興味を持って真空成形を観てひらめいたり、何かできるんじゃないかと思ったりしてくれるのではと思っています。
 このキチンとしているところを、社内に落とし込みたいと考えています。当社は「金型屋さんなので作業着」みたいなところがあって、身なりに無頓着というか。営業はスーツも着て行きますけれど、体に合っていないような、ちょっとだらしないかなという格好で行く場合があるので、それを「ちゃんとしろ」という前に「これがちゃんとしたものだよ」という見本となるような形をつくりたい。それをやりたいと思っています。身なり姿勢、話し方がキチンとしている人、会社からは、間違いのない金型が出来上がる。そのような人材、会社にしていきたいと考えています。 

...ワーキンググループに参加して...
 
取り巻く環境が全く違う5社、このような場がなければ出会うこともなかったかもしれない方々と、情報交換し話しあうことができました。このような取り組みはすぐに成果が出るものではありませんので、参加企業も入れ替えながら地道に続けていくことが必要と思います。

※この文章は、研究会での発言を事務局で取りまとめたものです。

株式会社ビルメン

代表者 :代表取締役 吉川研司   所在地:葛飾区東新小岩8-14-13
主な事業内容:マンション、ビルの総合メンテナンス
URL   :http://www.builmen.co.jp/

図6  図7

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

テーマ2 変革の時代に対応できる組織づくり

社員一人ひとりが輝いている企業であるために

株式会社ビルメン 取締役業務部長 吉川麻生

~休みの日にも顔を出したくなるような会社作り~

 3~5年後の自社のありたい姿というものを考えたとき、第一に、「社員のみんなが楽しく情熱と充実感を持って仕事ができていること」を挙げたいと思います。
 働きやすい環境を整える一方で、働きがいや働く楽しさを育めるような環境を作りたい。そうするためにも、最近では「コミュニケーションをとる」ということをもっと大切に、丁寧に考え、日々できるだけ実践できるように心がけています。
 まずは我々経営者と社員さんとのコミュニケーションです。半期ごとに社長と私とで、社員さんとの個人面談を最低30分、2時間かかるなら2時間、というのを始めて2回目になります。面談の時間を通して気付いたこと。それは、みんなそれぞれ思いを持って仕事をしていて、それを聞いてほしいと思っているということ。逆に私たち経営側も社員さんに対して、「言ってほしい・言ってもらわないとわからない」と思ってしまいがち。聞いてほしい側と、言ってほしい側の間にあるもやもやした部分がはっきりと見えたような気がしました。そして、やはり私たち(経営者、上司)側から率先して挨拶をしたり、様子を聞いたり、日頃からの関係作りに尽力する姿勢を大切にしたいと考えをあらためる良い機会になりました。社員さんの方でも、そういった面談の時間を有り難い・嬉しいと言ってくれる人がとても多く、やって良かったなと率直に思いました。
 そして最近うれしいなーと思ったことは、休みの日にお子さん連れて会社に立ち寄ってくれたり、1時間位ちょっと部下の様子を見に来てくれる、といったことが増えていることです。休みの日に会社に来ること自体が嫌でない、むしろ気軽に寄ったり、様子を見に行ってみよう、と思えるような場所にできたらいいなと思います。
 また、日常何の気なしに使用している「コミュニケーション」という言葉自体をきちんと理解し直すことが大切だと痛感しました。コミュニケーションとは、双方向の意思の伝達、情報の共有ということに、今一度留意しきちんとお互いで同じ情報や思いを共有できているか、ということに注意するようにしています。
 私たち経営者や部下を持つ人達にとって、コミュニケーションは発信することだと思ってしまがちなので、聞くことを大事にする、途中で遮ったり、話の腰を折ることなく、全部聞いた上で相談ベースで一緒に考えていくということを大事にしようね、と話してもいます。Noから入らない。例えば面談で、全くとんちんかんな身勝手としか思えない話を切り出されたとしても、「この人は本気でこう思っているんだな」というのをきちんと聞き、その後で会社の制度や考え方なりを一生懸命説明して理解してもらう。それをしなければ、その社員は不信感を持って面談を終え、ゆくゆくは辞めるしかない・辞められてしまうという末路を迎えてしまうのだと思います。社外のお客様とのやりとりも含め、メールだけで済ませてしまうことのないよう、返信がない場合はきちんと内容が伝わっているか電話などで確認するなど、お互いの間できちんと共有できているか、という点に重点を置くようになりました。
 社内全体のコミュニケーションについてですが、社員一人ひとりが、会社を良くしよう・お客様のために何かしようと考えたとき、アウトプットする場として階層別の会議を設けて2,3年たったところです。最初はガス抜きと言いますか、文句の言い合いだったり、逆に無言のまま時間だけが過ぎていく、みたいな状態から始まりましたが、近頃は中間層から、社内の懇親や美化について自主的・建設なアイデアが出てきています。実際、プロジェクトチームが立ち上がり、実際行動に移しているものもあります。
 経営側が気づかなかった現場レベルの問題が会議の場で話し合われるようになり、自分たちで考えて解決することで、それぞれの会社や仕事に対する責任感や任されている感が強まったなと感じることが多いです。
 そのほか、日々の様々な情報を共有するために、階層別の会議をしきちんと議事録を作成し全体共有することで、5つに分かれている部署全体に行き渡るようにしています。議事録作り、配信後も送りっ放しにするのではなく、会議参加者が自分の部署のみんなにきちんと説明するなど、そこでもきちんと「共有」できるように協力をお願いしています。
 実際大変ですけれども、決まったことに対して気持ち的な面で疎外感(上が勝手に決めている、そんな話聞いてない等々)が出ないように気を配ってもらっています。

~どんな時も初めの一歩は「思いやり」~

 人間関係を良くすることは、一見そんな些細なことで、というような小さなことの積み重ねだったり、反対に一筋縄ではいかないようなタフな話し合いが必要な場合もあります。どんな場面でも、これくらいでいっか、と面倒くさがったりあきらめたりせず、絆はもっと強められる、もっともっと良くしていけるという信念のもと日々愛情をこめて接することを心がけています。対個人にしても対部署にしても、たとえ向こうができないと言っても、こっちはもっともっと信じて、求めていくという気持ちが私たちになかったら、そこで会社の成長がストップしてしまうと思っています。経営者側、管理指導する側の私たち自身が、意欲や目標水準を高く持ち続けるいうこと、希望をもって未来を見据えることが、この変革の時代に一丸となって組織的に日々歩み続けていくこと中で最も大切な課題だと思っています。
 昔とは比べ物にならないほどの情報社会の中で、会社のためにどういった取り組みをしたらよいのか、あまりに多い情報の中でおぼれてしまいそうになったり、手探りの状況が続いたり迷ったりすることもしばしばです。
 そんな中で、一つ私が決めていることは、どんなときでも、その人にとって、会社にとってそれが本当にいいことかどうかということ「思いやり」の中で選択するということです。利益や一般常識、慣習など考慮するべきポイントは枚挙に暇がありません。「思いやり」や「愛情」をもって決断を下す時、迷いや不安が不思議と晴れ、失敗したとしても後悔することがありません。自分の直感や思いを信じること、日々頑張ってくれているみんなを思って決断する時、おのずと勇気が湧いてくる気がしています。
 日々早まっていく変革スピードの中で、私たちが置かれる状況も、急勾配の坂と例えられることがあります。社員さん達の人数からしてみても、経営者だけが世の中に併せて「変わる、成長する」スピードでの運営ではもはや到底追いつきません。会社の存続、成長は、一緒に共感、共鳴して会社を運営していってくれるリーダーを育てられるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
 こんな状況だからこそ、思いやりや愛情といった気持を育める人間力を培い、大いなる愛情と信頼関係の中で一人一人が支えあい、励ましあい、安心して挑戦し、頑張り続けられる会社づくりを目指していきます!!

~社員研修と財務管理力~

 仕事が楽しい!とやる気を出して頑張るために、やはり仕事でお客様に喜んでいただき、次の仕事をいただくことで評価していただくという好循環が必須だと思っています。一人でも多く、一日も早くそういう状況で仕事ができるよう、技術力の向上を図ることが第一優先の課題です。
 2017年の年末から、社内研修制度をスタートさせました。まだ手探りの状況ではありますが、毎月研修内容を決め、担当する部署でテキストを作成してもらいます。アンケートを取ったり、ヒヤリングしながら研修が構成されることで、等身大の、痒い所に手が届くような内容になっているのが大きなポイントだと思います。指導を担当する部署によっては、テキストだけでなくわかりやすく模型を作ったりしてくれることもありました。1,2年後には外部の方に向けてもセミナーなどを開催できるようなところまで研修の精度を上げていくことを目指してがんばっています。
 ビルメンテナンスのプロフェッショナルとして、他のプロの方たちとの競争関係のなかで、信頼して、安心して「是非ビルメンさんに!」と選んでいただける技術力、プロであるという自覚を持って日々の仕事に全力投球してもらえるような指導していけたらと思っています。
 具体的な目標としては、「ビルメン(あなた)のすごいところは?ほかと比べて勝てるところは?」と聞かれて、0.2秒くらいでそれぞれ即答できるような組織作りをしたいです。自分の強みを生かし、自信をもって、楽しくやりがいをもって仕事ができれば、きっと即答できるはずです。私自身も含め、みんなが即答できる、そんな活気に満ちた会社を思い描いて頑張っていきたいと思います。また、社員さん達の働きぶりに対して、きちんとお給料という目に見える形でお返し出きる経営者でありたいという個人の目標があります。きれいごとや精神論だけでなく、きちんと結果に反映させることのできる「かっこいい経営」に尽力することで、働き甲斐ややりがいといった社員さんたちとのエンゲージメントUPに直結させていきたいです!

...ワーキンググループに参加して...

 毎回、皆さんの意見やお話を伺うことで、参考になることや教わることがたくさんあり、元気や勇気をいただきました。また、新たな視点をいただく機会にも恵まれました。貴重な機会をいただいたことに本当に感謝しています。
 公の機関、行政に対しては、自分の会社を高評価している・働きがいを感じると思っている社員さんがたくさんいる会社を見学し、直接社員さんたちの声を聞く機会を作っていただけたらと思います。

※この文章は、会合での発言を事務局で取りまとめたものです。

株式会社不二製作所

代表者:代表取締役社長 杉山博己   所在地:江戸川区松江5-2-24
主な事業内容:産業機械製造(サンドブラスト装置の製造・販売)
URL:http://www.fujimfg.co.jp/
受賞等:地域未来牽引企業(経済産業省、2017年)
    東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞奨励賞(東京都、2015年)

図8  図9

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

テーマ2 変革の時代に対応できる組織づくり

「エアーブラスト」の面白さを社員とともに

株式会社不二製作所 代表取締役社長 杉山博己

 ㈱不二製作所は、エアーブラスト技術を利用して、既存工法の代替えや新加工法の発見など、世の中にプラスのインパクト、イノベーションを与え続けていくことを目指しています。多様なユーザーのニーズに対応していくためには、自社の技術はもとより、総合的な知識・判断力が求められます。また、それに対して、果敢に立ち向かっていく力が必要となり、これまで以上に、人材育成の強化が必要だと考えています。
 組織は人によって構成されており、成長発展するかは人次第。いい会社となって永続的に成長していけるかは、社員の働きがいを高めることにかかっていると考えます。

~次世代の人材とは~

 多様化する社会では、求められる商品が少品種大量生産から多品種少量生産になっており、そこで求められる人材は、従来型の組織間のすり合わせを得意とした調整型人材ではないのではないか。変化の中で新しいイノベーションを生み出していけるような人材、人の財(宝)と書いて「人財」であると思っています。そのような高度な人材とは、①自分で判断できる、②変化に対応できる、③基礎力が伴っている、以上3つのポイントを備えた人材であると考えます。

~会社のあり方~

 そこで、㈱不二製作所が考える会社のありかたですけれど、会社自体も、そこで行う仕事もそもそも魅力的でなければ、このような会社の求める人材は集まらない。まず魅力的な会社になること、魅力的な仕事を提供し続けることが必要だと思っています。というのも、現代社会では、会社が人を選ぶのではなく、人が会社を選ぶ、私たち会社が選んでもらう時代だと思っています。

 積極的に選んでもらうために、考え方としては、まず、「楽しさ」「目的」「可能性」という、人間が仕事をする3つの「直接的動機」(「マッキンゼー流最高の社風の作り方」による。)に働きかけること。次に、働きがいを構成する5つの構成要素、①従業員がマネジメントをどれだけ「信用」しているか、②従業員がマネジメントからどれくらい「尊敬・尊重」されていると感じるか、③従業員がマネジメントに「公正」に扱われていると感じるか、④従業員の仕事に対する「誇り」、⑤従業員が職場で感じている「連帯感」(Great Place to Workによる。)を押さえること。
 これらを推進していこうというのが㈱不二製作所の考え方ですが、根幹となる「仕事の楽しさ」について、以下具体的に述べたいと思います。

~面白いからこそ一生懸命働ける~

 ㈱不二製作所は、ブラストという仕事をしておりますが、これが非常に面白いのです。まず、生産工程にブラストを取り入れることで工数やコストの削減等のメリットがあり、お客さんに驚かれ、感謝されます。二つ目としては、ニッチな技術なので開発の余地が大きく、工夫次第で技術革新やイノベーションを実現できます。営業でも、設計でも、開発でも、ちょっとした工夫を加えて、新しい技術となるような仕事を見つけることができます。三つ目としては、ブラスト加工も装置も一品一様で飽きません。常に工夫が必要で、考えながら仕事をしているところがいいのではないかと思います。
 やはり、自分で考えて自分で判断できるからこそ仕事は面白い。逆に言うと、その能力を持っていないといけない、その能力を学ぶ機会を提供していかないといけないので、それこそが会社の責務だろうなと考えています。そこで今は、専門教育ということで、専任の教育係を設置して資格制度を導入していこうと取り組んでいます。もちろん、「対話とコミュニケーション」や「環境整備」という大きな柱にも取り組んでいます。
 従業員に対しても「ブラストの可能性はまだまだ夜明け前」ということを常に言っており、世の中には弊社の技術で解決できる問題がまだまだたくさんあると考えています。また、社内で経営理念やミッション・ビジョン・バリューといったことを共有していますが、本当の意味で、経営理念や会社の方向性を理解してもらっているかは、大きな課題だと考えています。そこで今は、朝礼で述べたことを改めてイラストなどにまとめて各部署に配る、部署からは意見や質問を挙げてもらう、それを見て、都度回答をしながら、場合によっては次の機会などに細かく説明する、ということをやっています。
 人材強化について、これからの試みとして考えているのは、中小企業だとなかなか難しいのですが、社内での人事異動です。どうしても、いったん一つの組織や部署に入ってしまうと、その人がいなくなると困るというのが多いですが、そこを積極的にやっていかないと、やはり新しい発想というかイノベーションが生まれないなと思っているので、このあたりでチャレンジしていきたいなと思っています
 そのほか、公的なところから表彰されたり報道されたりすることも社員の励みにつながり、また採用応募にもつながると考えますので、各方面へアピールするためにも工場見学など、基本的には受け入れてオープンにするようにしています。

~ワーキンググループに参加して~

 今回、いろいろな会社と交流ができて良かったと思います。ただ、自由でフランクな半面、テーマが自由すぎたので、自分自身、アウトプットとして十分だったかには疑問が残り、力不足を反省しています。事務局サイドには、より詳しい個別の会社に実情に沿った意見サポートがあっても良かったかもしれません。
 公的機関に望むこととしては、財政的な支援がありますが、管理上の問題点等により困難かと思います。また、具体的には難しいと言わざるをえませんが、日本全体としては、「基礎力向上」や「考える力」「解決する力」を身に付けるため、これまでの集合教育にも工夫が必要かもしれません。

 ※この文章は、会合での発言を事務局で取りまとめたものです。

株式会社横引シャッター

代表者:代表取締役 市川慎次郎      所在地:足立区綾瀬6-31-5
主な事業内容:駅の売店などの横に引くシャッターや特殊シャッターなどの製造販売
URL   :http://www.yokobiki-shutter.co.jp/
受賞等   :足立区ワーク・ライフ・バランス推進認定企業(足立区、2017年更
       足立ブランド認定企業(足立区、2017年度更新)
       働き方改革宣言企業(東京都、2017年)
       がん治療と仕事の両立に取組む優良企業(東京都健康福祉局、2018年)

図10  図11  図12

地域人材育成プラットフォーム化事業G2『次世代の育成を考える研究会』

テーマ1 社員の『働きがい』向上について

社 員 は 家 族

 代表取締役 市川慎次郎

「社員の『働きがい』向上について」とのお題をいただきましたが、まず、㈱横引シャッターの大方針として「(大手と)同じ土俵で戦わない!中小企業だからできること」というのがありまして、何事においても私はそのように意識しております。
 社員に対しても、「自分たちだからこそできるというものを持て。それはカッコよくて見栄えが良くて聞こえが良い、なんてものでなくていいんだ。自分たちが本当に強いという一個の武器、キラーカードを持っておけよ」と伝えています。

 うちが『社員のために』を意識して行っていることはいくつかありますが、なにしろ、真剣に向きあうというのが一番ですね。『社員は家族を地でいく』というのを私が総務部長時代からずっとやっていますが、社員の一人ひとりにご家庭があり、生活スタイルが違いますので、会社側が社員に合わせてあげることも大事、基本的には寄り添ってあげるべきだと思っています。それを実現するためには、何しろ全力で社員一人ひとりを見ております。
 就業規則の休暇制度などにしても、標準的なものよりは広くしていますが、一人ひとりに必要なものは大きく異なりますので、社長パワーを発揮して「お互い様」の風土を大切にしています。時期的におおぜい重なっちゃいますがお子さんの入学式・卒業式であるとか、高齢社員の通院であるとかですね。社員数が40人弱の会社なので私の肌感覚で采配しておりますが、今この肌感覚をナンバー2に承継させようとしているところです。
 社員は全員正社員です。そして定年はありますが、定年年齢を迎えたからと言っていきなりガクンと能力が下がるわけではありませんから、弊社としてはぜひ続けていただきたいので、本人に意欲があるならお給料もいじくらずに、健康に配慮しながら雇用を続けるというのを基本にしております。 

~社員に対して『変化は目に見えるように』『ちゃんと伝える』~

会社の立て直しの時に、私がすごく意識してやってきたことは、社員のモチベーションを上げるためにと何かを企画するときは、はっきり目に見えるような変化から始めるということです。
 目に見えるところから変わっていくと、自然と社員のモチベーションも上がるし、変わっていく過程をみんなで共有するようにしています。そのようにしていく中で意見が出ましたのが、わが社は古い会社の常で、あうんの呼吸・言わないでもわかるだろうという風土がありましたが、現実は、ちゃんと伝えないと「伝わってない」ということです。
 そこで、会社は貴方のことをこういうふうに思っているということを伝えるために、毎年1か月かけて社員一人ひとりと面談しています。「去年まで君はこのぐらいの目標だったから、今年はこういうような目標でいこうよ、どう思う?」と、会社が希望するあなたの将来像というのを示して、一人ひとりに目標として持たせるようにしています。もちろん自分で目標を持って進んでいる社員もいますけれども、そうじゃない社員もいますし、なんとなくわかるんだけれど何をしたらいいのかがわからない、という初めの一歩の出し方がわからないような社員もいるので、一人ずつ会話していく中で、「初めの一歩がわからないんだな」とか「その先の大きいビジョンが見えないんだな」などが、顔を見ながら話していると分かりますので、時間と労力をかけてやっております。
 あと、「直接還元型の福利厚生」と言いますか、「みんな頑張っていっぱい利益出たら」「直接その働いている社員に直接還るようなもの」を、というのを私の代から始めまして、それは不定期にということですが、雑談の中で話し合って物を決め、お金をかけてやっています。例えば、昨年は、防災グッズをそれぞれのご家族分購入して会社に保管してあげる、会社にさえ行けば自分の家族を生き残らせる防災グッズがあるよというのをやりました。今年は「カッコいい『戦闘服』で仕事しようぜ」ということになりまして、全員にオーダースーツを作りました。
 いろいろと、モチベーションを上げよう上げようとやっていたら、「働きがい」の方に行ったのかな、みたいな感じですね。

 最後に、弊社(私)が求める人財ですが、
・知識より知恵(実際に使えなければ、本棚にしまってある本と一緒。本は開いて役に立つ)
・スキルよりもやる気(やる気は他者からよく見える。やる気の無い者にチャンスすら与えない)
・素直である(教えがいがある。教えている方も沢山教わるので、教えていて楽しくなる相乗効果が生まれる)
・気持の良い挨拶返事(気持の良い挨拶返事が出来ない者に、チャンスなど与えない)
・欲を持つ(人より良い生活をしたい、美味いモノが食べたいなど。欲が有るから、頑張れる)
 働きがいとは、どんな仕事であっても、仕事が楽しいか楽しくないかと言うところじゃないかなと思っています。仕事が楽しい・会社が楽しいと社員が言えていたら、きっといい会社なのだと思う。普段しっかり仕事をしていなければ、楽しいとは言えませんから。そんな会社であるために、社員にも先ほど述べたような人財であってほしいし、そうなれるよう、私はこれからも全力で一人ひとりを見ていこうと思っています。

...ワーキンググループに参加して...

 メンバー各社のお話を伺いますと、どの会社も社内の改革をする際には一番最初に手掛けるのが社員のモチベーションアップだったと思います。自身が積み上げてきたモノが間違いではなかったと確認できました。ただ、今回は、フリーディスカッションの会合ということでしたが、最初に大きなテーマが示され、もっと回数や1回あたりの時間があれば、より議論を深められたかなと感じました。
 公的機関に望むことですが、我々の一番の問題は人手不足です。長年勤めてくれている社員に、高齢になっても我が社で働いてもらうために、給与等に対する補助をもっともっと充実させて欲しいと切に望みます。

※この文章は、会合での発言を事務局で取りまとめたものです。

高島 利尚(タカシマ トシナオ)

図13

得意分野   経営課題整理・事業コンセプト策定・事業計画策定
       地域資源活用・農商工連携
       経営者の思い・本音を聴きだし、経営者のやる気創出
       豊富な人脈を駆使してのワンストップ対応

資格、実績等 中小企業診断士、ITコーディネータ

現職     日本工業大学大学院技術経営研究科客員教授、寒川町地域経済コンシェルジュ、
      (一社)クラウドサービス推進機構副理事長、 (内閣府)地域活性化伝道師、
       NPOITコーディネータ協会理事、NPOたま産業支援センター副理事長、
      (一社)東京都中小企業診断士協会三多摩支部顧問、都立城東職業能力開発連絡
       協議会会長 など
       中小企業庁、全国中小企業団体中央会、東京都中小企業振興公社等:各種委員等

実績     寒川町の産業振興(町内製造業の活性化支援)

       創業支援(多摩地区の創業塾立上(18年前ぐらい)から創業者への各種支援
       中小企業のIT経営」に係る選定委員(12年)その他多数
       TAMA協立上支援、TAMAコーディネータ制度立ち上げ

所属団体  (一社)経営情報学会、(一社)クラウドサービス推進機構、特定非営利活動法人
       ITコーディネーター協会、(一社)東京都中小企業診断士協会三多摩支部、
      (一社)首都圏産業活性化協会(TAMA協会)会員 ほか

◆主な著書
・「中小企業支援の視点と手法」(コンテン堂)
・「中小企業のIT経営論」(同友館・共著)
・「J-SaaS活用マニュアル」(同友館・共著)
・「中小企業の経営革新ノウハウ48」(同友館・編著)
・「中小企業のIT活用診断」(同友館・中小企業診断協会編・共著)
・「独立・起業のすべてがわかる本」(経林書房・共著)
・「ITソリューション」(同友館・編著)
・「情報通信活用事典」(産業調査会:編集委員)
・「中堅企業における戦略的情報構想立案」(IPA)
・「上級シスアド合格への道」(同友館・編著)
・「システムアナリスト合格への道」(同友館・編著)
・「未来型オフィス構想」(同友館・編著)
・「経営革新と情報リテラシ」(日科技連・共著) その他
・その他(全取協(旧NIC)のIT経営関連資料、雑誌「企業診断」、等)

連絡先 e-mail:toshi-takashima@jcom.zaq.ne.jp

Facebook : http://www.facebook.com/profile.php?id=100002202881997


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